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3 ◇夫の赴任先に行こうと決意

Author: 設樂理沙
last update publish date: 2026-04-04 10:57:02

 夫が我が家から居なくなると父親までもが母と連れ立って

娘の顔を見に来るようになった。

 ふっふ~ん、可愛く思えなかった娘でも、孫は違うんだぁ~

なんて斜めから父親のその姿を呆れ顔で見ていた。

 そんな日々を過ごす中……

娘が3ヶ月めを迎え100日のお食い初めも終えた頃

私は突然閃いた。

 娘の数種類ある予防接種のことなどもあるから、まだ決定は

できないけど、育休3年をまるまる取ることにして行けるだけ、

夫の住む国に行こうかと。

 そんな風に思ったりしてみたものの、治安の悪さを考えると

幼子を連れて行くのはどうなんだろうと不安にかられたり

やはり夫と離れてしまったことで、いろいろと考え込んで

しまうことが増えた。

 月日は流れ……

 そしていろいろ悩んで出した私の結論

それは……

娘が1才を迎える頃に1度向こうに行ってとにかく

生活してみる、ということ。

 案外それこそ、案ずるより産むが易しとなればそのまま

あちらでの生活を続ける。

 いろいろとあちこち支障が出てくればこちらに帰ってくる。

 夫に対しても娘に対しても自分のできうる限りの努力で

家族として一緒にいられるように、そして少しでもサポート

できるようにと、それが私の願いだった。

 そう決心すると少し気持ちが前向きになり、心が軽くなった。

 頃は春先、娘と共に寒い冬をちょっぴり寂しい気持ちを抱えて

過ごし、ようやく季節も穏やかで暖かくなりはじめた頃のこと。

          ◇ ◇ ◇ ◇

 夏も終わり来月には娘の1才の誕生日を迎えよういう頃、夫へのメールに

どれだけいられるか分からないけれど、できるだけ家族で暮らせるよう娘が

1才を迎えたら娘を連れてそちらに行こうかと思ってる旨を書いて送信した。

 一人暮らしで寂しく不便な生活を過ごしている夫はさぞかし喜ぶだろうな、

なんてちょっぴりうきうきした気分で夫の返信を待った。

 しかし待てど暮らせど……その日返信はなかった。

 メールを覗く暇も無いほど忙しいのだろうか!

 夫からの返信は私が送信した日から3日も過ぎてのことだった。

 普段の何気ないメールでもこんなに時間をおいて返ってきたことがなく、

なんで? と訳の分からない不安に包まれつつ私はメールを開いた。

『今年の正月は赴任早々で帰国できなかったけど、来年の正月は暮れから

帰国して必ず家族でお祝いして新年を迎えるようにするつもりでいる。

 今は仕事のほうがとても忙しくてこちらに来てもらっても

家族の団欒は難しいと思う。

 それなのに小さな子を連れてわざわざ来てもらうのはなんだか忍びないよ。

 君の気持ちはうれしいけど、赴任も2~3年で済むかもしれないしね。

 俺ひとりでなんとかやっていけてるから心配しないで……ネ? 』

 こんなふうに、私たちを気遣うような思いもしない返事が届いた。

 

当初は毎日必ず1度はメールでのやりとりがあったけれど

今では1週間に2~3度の頻度になっていた。

 私もどっちかというとめんどくさがりやでその上乳飲み子を抱えても

いたので、却って助かってたくらいなんだけど……。

 行く前も行ってからも言葉の合間あいまで寂しいという言葉を聞いて

いたので、何がどうってことでもないのかもしれないけれど……

何か、ひっかかりを……返信メールから感じた。

 だって、私、今ちょうど仕事してないんだよ?

 娘だって当分幼稚園や小学校まで家で自由にいられる身なんだよ?

 私が行きたくないって話なら別だけど、夫のほうから

来なくていいよぉ……ってどういうこと?

 2~3年って……。

 ちょっ、あなた──

私や娘の事は全然恋しくないってことなの?

 なにか夫と自分との温度差に、私の心の中にひやりとしたものが

生まれた。

 そして私は決めた。

 やんわりとではあるが、来なくていいと言っているのだ。

 押しかけて行くこともできまい。

 しかし、数日間という日程で夫の新しい住処、職場を見に行くことは

妻としては当然のこと、ううん権利があると思う。

 私は娘を母に預け、一抹の不安を抱えつつ夫の住む国へと向かうことに

した。

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